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【この記事は2023年6月21日に初投稿されました。】
大根とは
簡単な説明
大根は、アブラナ科ダイコン属に属する野菜です。沢庵に使われたり、おでんの具材になったりと、ほとんどの方がご存じであろう冬野菜の代表的存在です。根だけでなく葉も食べることができ、根が淡色野菜に分類されるのに対し、葉は緑黄色野菜に分類されます。
原産地
地中海沿岸から中央アジア周辺が、原産地とされています。
歴史
ここでは、大根の歴史について、世界と日本に分けて勉強していきましょう。
世界
今から約5000年前の、古代エジプト時代に、ピラミッドの建設に携わっていた労働者に、玉ねぎ、にんにくとともに支給されていたとの記録があるほど、歴史ある野菜です。
古代から多くの薬効があるとされてきて(現代においても大根に含まれている辛み成分のイソチオシアネートなどについて、研究が進められています)、魔力を封じたり霊力があるとも信じられてきました。
ローマでは、大根は「ラファヌス」と呼ばれ、他の野菜とは区別して扱われ、アポロの神殿に奉納されるなど、大変貴重な存在でした。
しかし、ヨーロッパ全体に広まったのは15~16世紀ごろと意外と遅く、むしろ早くから大根文化が栄えたのは、アジアにおいてでした。
中国では、大根から燃えやすい硫黄を抽出して油煙を作るほか、墨も作り出すなど、食用とする以外にも様々な形で有効活用されてきました。
日本
日本には、インドから中国、そして朝鮮半島を経て、稲作文化と共に伝来しました。
現存する日本最古の書物である「古事記」にも記録があるなど、日本でも古くから大根と関わりがありました。
ちなみに、現代では「大根足(脚)」というと、見た目的にあまりよろしい太さ形をしていない足(脚)を批判的に表現する言葉として用いられることが多いですが、古事記において仁徳天皇が「女性の白く美しい腕の形容」として大根を用いるなど、容姿を褒めるのに使われていたこともありました。
また、日本において何度も訪れてきた飢饉(食糧難)を救う(大根めしなど、米が不足しているときにそのかさ増しに役立ちました)など、日本の歴史を語るうえで、なくてはならない存在です。
良い大根の見分け方
良い大根は
1.太くて重みがある
2.まっすぐに伸びている
3.皮にハリがあり、ひげ根が少ない。そしてひげ根の間隔が均一
4.葉の部分が変色ておらず、しおれていない
ものが良いとされています。ずっしりと重い大根は、水分をたっぷり含んでいて、栄養が均等に行き渡っていることが多いです。
また、カット大根は、切り口が変色していたり、もやがかかっているものは避けましょう。「す」が入っている可能性があります。ちなみに「す」とは、中身にすきまが出来てスカスカになっている状態のことです。味も落ちていることが多いです。
栄養素
根
根については、野菜類のなかで特筆すべき量の栄養素は、残念ながら含んでいません。しかし、いくつかの大根というものを特徴づける酵素や、ビタミンB1・B2、カルシウム、鉄などが少量ながら含まれているのも、見逃せない事実です。ここでは、それらについて勉強していきます。
ジアスターゼ(アミラーゼ)
でんぷん分解酵素です。胃腸の機能を助ける効果があります。
オキシターゼ
タンパク質分解酵素です。魚の焦げにできる発がん性物質のベンツピレンを分解する作用があります。このことから、「焼き魚に大根おろし」の食べ合わせは、良いものといえるかもしれません。
イソチオシアネート
大根の辛みの正体です。これが大根や、大根の仲間であるアブラナ科の野菜たちの辛さをもたらしています。
現段階の研究では、人体に対する有効性は証明されていないので、積極的に摂るべきとはいえませんが、胃液の分泌や脂肪分解作用、殺菌作用や発がん抑制など、様々な可能性を持っているかもしれないといわれています。
ビタミンB1・B2
ビタミンB1は、糖質の代謝に強く関わる物質で、不足すると疲労感やイライラにつながります。また、ビタミンB2は、脂質の代謝に強く関わる物質で、皮膚などの健康維持に欠かせません。
当ブログで詳しく解説しているので、よろしければ以下のリンクを参考にしてください。https://shunnayasai.com/vitaminb1b2/
カルシウム
骨の強化などに欠かせないミネラルです。骨粗鬆症などを防ぐ可能性があります。
鉄
血液を作るのに欠かせないミネラルで、貧血の対策になります。
葉
繰り返しになりますが、葉は緑黄色野菜に分類されます。体内でビタミンAに変わるβ‐カロテンや、かぜ予防や美肌作りに有効なビタミンCを豊富に含んでいます。
ビタミンAに関して、当ブログで解説しているので、よろしければ以下のリンクを参考にしてください。https://shunnayasai.com/vitamina/
部位による使い分け
葉に近い部分は、辛みが少ないので、大根おろしやサラダに向いています。
中央部分は、煮物などに向いています。
先端は辛みが強いので、薬味に用いるのに向いています。なお、大根はなぜ先端の方が辛いのかについては、まだはっきりとした研究結果はでていませんが、土の中で虫に食べられないようにするため、という説があります。
品種
大根は、一説には100種類以上の品種があるとされ、正直、全ては紹介しきれません。ここでは、よく見かける品種に的を絞って紹介していきます。
青首大根
現在の日本で、最も多く見かけるであろう品種で、葉に近い部分が緑色になっています。生食、漬物、煮物と様々な調理方法に対応できるオールラウンダー的品種です。
聖護院大根
見た目が蕪(かぶ)に似ている京野菜です。1kg程にもなるほどの、大型の丸大根です。煮物に向いています。
三浦大根
昭和初期に生まれた白首大根です。沢庵に用いられることが多いです。
レディサラダ
皮が紅色の小型大根です。色を生かして生食すると良いです。神奈川県三浦市で多く栽培されています。
ラディッシュ(二十日大根)
明治以降にヨーロッパから導入されたミニ大根です。生食に向いています。
復習
ここでは、大根について得た知識を、しっかりとものにするために、一問一答形式のクイズで、大根についての復習をしていきます。
問題
問題1.大根は何科の野菜ですか?
問題2.古代エジプト時代に、何の建設に携わっていた人に支給されていましたか?
問題3. 「皮にハリがあり、ひげ根が少ない。そしてひげ根の間隔が均一」「葉の部分が変色ておらず、しおれていない」以外に、良い大根の条件を答えてください。2つあります。
問題4.焼き魚の焦げに含まれている発がん性物質であるベンツピレンを分解してくれる酵素の名前を答えてください。
問題5.煮物に向いているのは、葉に近い部分、中央部分、先端部分のうちどこですか?
解答
問題1.アブラナ科の野菜です。アブラナ科の野菜は他に、キャベツやブロッコリー、菜花などがあります。
キャベツについての当ブログでの解説https://shunnayasai.com/cabbage/
問題2.ピラミッドの建設に携わっていた労働者に支給されていました。大根以外に、玉ねぎやにんにくも欠かせない存在でした。
問題3. 「太くて重みのあるもの」「まっすぐに伸びているもの」が、良品であることが多いです。
問題4.オキシターゼです。ベンツピレンを分解してくれるだけでなく、単純に焼き魚と大根おろしの組み合わせは美味しいですね。
問題5.中央部分が答えです。葉に近い部分は辛みが少ないので生食向きで、先端部分は辛みが強いので、薬味に向いています。
大場しゅんのチャレンジクッキング
今回、僕がチャレンジしたのは・・・「大根おろし鍋」です。
※今回の大場しゅんのチャレンジクッキングにあたって板木利隆監修 高橋書店発行 「からだにおいしい 野菜の便利帳」 2021年 73頁を参考にさせていただきました。
材料
大根・・・1本
水菜・・・半束程度
ポン酢・・・適量
豚肉(しゃぶしゃぶ用)・・・適量
この他、ねぎなどお好みの野菜を入れても良いです。
実際に作ってみて
まずは、大根の皮を包丁でむいて、大根おろしを作るところから始めました。「出汁やお湯の代わりに大根おろしで具材に火を通す」という、初めてのことをするとあって、かなり期待して大根おろしを作り始めましたが、さすがに大根丸々一本をおろしにするのは、非常に疲れました。正直途中で嫌気がさしました。
嫌気がさしながらも頑張って大根おろしを作り上げ、水菜をカットしましたが、大根おろしを作る苦労に比べて、この工程はとても楽に感じました。
そしていよいよ、大根おろしを鍋に入れて火にかけ、水菜や豚肉とともに茹でてポン酢で食す、という段階になりましたが、大根おろしの水分が思ったより少なくて、水菜や豚肉に火を通すのに時間がかかりました。
なんとか火を通して、ポン酢にくぐらせ食べてみると・・・うん、これは美味しい!このとき、大根おろしを嫌気がさしながらも頑張って作った苦労が報われたと思いました。
また、塩分のことなどを考えたら、あまり健康にはよろしくないうえ、お行儀も良くないことなのですが、肉や野菜を食べた後の、大根おろしとポン酢の汁を食す、というより飲むのが、意外とおすすめです。
豆知識
ここでは、大根についての豆知識を一部紹介します。今まで勉強したことも含めて、さらに読者のみなさまの大根の知識が広まっていけば、幸いです。
大根はかつて、焼畑農法で作られていました。焼畑というのが、従来の「畑」を指します。時代が進むにつれて、白く乾いた田、「畠」でも作られるようになり、従来のものより辛みが少なく、太く長い品種が作られていったそうです。
また、大根に関わる格言に「大根の皮とらぬ阿呆、生姜の皮とる阿呆」というものがあります。これは、大根は皮をむかなければ食べられない、生姜は皮をむくと食べるところがなくなる、ということから、物事の使い分けが上手くできない人を批判的にいうのに使われます。
参考文献
本文中に掲げたもののほか
・佐々木寿著 農山漁村文化協会発行 「まるごと楽しむ ダイコン百科」 1994年
・青髪のテツ著 わたなべみきこイラスト KADOKAWA発行 「スーパーのエキスパート店員が教える おいしい野菜まるみえ図鑑」 2023年初版 46、47頁
・板木利隆監修 高橋書店発行 「からだにおいしい 野菜の便利帳」 2021年 70~73頁
・白鳥早奈英 板木利隆監修 高橋書店発行 「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」 2020年 56、57頁
・石原結實 牧野直子著 KADOKAWA発行 「知って驚くファイトケミカル 健康野菜大全」 2021年初版 93、94頁