まずは料理から(大場しゅんのチャレンジクッキング)
私が青果店で勤務していた頃も、正直、全くと言って良いほど、その名前を聞いたことがなかった「ふだんそう」またの名を「スイスチャード」。その存在をしっかりと認識したのは、私の自宅近くで大規模な家庭菜園をされている方が設けていた、無人販売所にそれが売られていた時でした。
かつての私は、新しいものを非常に恐れる性格をしていましたが、人間って、いつまでも成長する生き物なのですね。無人販売所のポップ(商品の名と値段が書かれている広告)に「スイスチャード」という聞きなれない名前と、鮮やかな緑色のそれを見て、大して思考もせずに、購入する私がいました。
購入後、自宅でスマホを使って、ふだんそうについて最低限の事を調べて、後日、料理をしました。今回は「缶詰めのいわし」と「粉チーズ」をお供にした、「ふだんそうといわしの缶詰めの炒め物」を作ってみました。
材料(1人前の食材)
・ふだんそう・・・1~2束
・いわしの缶詰め・・・1缶
・粉チーズ・・・お好みで
・サラダ油・・・適量
料理の工程
※今回は下茹でしての「アク抜き作業」をしませんでしたが、より健康や味の良さを求めるのであれば、面倒でもアク抜きをした方が良いです。アク抜きは、ほうれん草と同様、普通に下茹ですればOKです。
1.ふだんそうを洗って水気を切り、包丁でカットする
カットする大きさは、好みの大きさで良いです。
2.フライパンを火にかけ、サラダ油をひく
強火でしっかりフライパンを熱してください。
3.いわしの缶詰めを、熱したフライパンに投入し、焦げないように炒める
ここでは敢えて、缶詰めの汁も投入すると、次に投入するふだんそうに適度に汁が絡まり、美味しくなります。もちろん、汁は捨てて、しゃきしゃき感を残したふだんそうにするのもありです。なお、火加減は弱めても良いです。
4.ふだんそうをフライパンに投入し、いわしと一緒に炒める
いよいよふだんそうも投入です。敢えて火をほとんど通さず、その食感を楽しむのも良いですし、先ほど私が述べたように、汁と絡めてひたひたにするのも良いです。
5.火が通ったら、皿に盛る
センス良く盛り付けましょう(私は残念ながら、あまりセンス良く盛り付けることが出来ませんでしたが(笑))。
6.お好みで粉チーズを振りかけ、完成です!
試食・感想
フライパンでいわしを炒めているときから、良い香りがしてきて、これにふだんそうを絡めたら、相当美味しくなるなと考えながら、料理をしていました。皿に盛った時の見た目の感じも、とても美味しそうに見えました(繰り返しになりますが、決してセンスの良い盛り方ではありませんが)。
いざ汁が絡まったふだんそうを口にしてみると、青菜独特の香りと味、いわしのエキスが見事にマッチして、とても美味しかったです。今回は主役の座をふだんそうに譲ったいわしも、もちろん美味でした。さらにここにチーズを絡めて食べてみましたが、その味わいの濃厚さに、大変感動することができました。初めてのふだんそうの料理は、満足のいくものが出来ました!
ここからは、ふだんそうについて、より深く知っていきましょう。
良品の見分け方
・葉の緑色が濃く鮮やかで、艶やかでハリがあるもの
・茎がしっかりしているもの
普段あまり見かけないかもしれないふだんそうですが、ほうれん草や小松菜などの、ポピュラーな青菜(葉物野菜)とチェックすべきポイントは似ているので、安心してください。
栄養素
実は栄養的にもかなり優れているふだんそう。ここではふだんそうを知るうえで、特に取り上げるべき栄養素について、紹介します。
・β‐カロテン
体内でビタミンAに変換されます。ふだんそうには、可食部100gあたり、β‐カロテンが約3700マイクロg含まれます。これは、ほうれん草の約4200マイクロgに肉薄する多さです。ビタミンAは、目の健康や視力の低下予防、皮膚や粘膜の保護に効果があります。また、野菜経由のビタミンAには、抗酸化作用があり、ガンや動脈硬化予防にもなります。
・ビタミンB₁
多くの野菜にはまとまった量が含まれないビタミンB₁も、ふだんそうからは摂れます。糖質の代謝に欠かせないビタミンで、不足すると体に脂肪がたまりやすくなってしまう他、疲れやすくなります。
・ビタミンB₂
脂質の代謝に欠かせないビタミンです。目や皮膚、粘膜の健康には欠かせません。不足すると、口内炎や肌荒れなどの原因になります。
・ビタミンB₆
たんぱく質のアミノ酸への分解、たんぱく質への再合成に強く関わります。貧血予防や神経の安定に有効です。
・ビタミンE
血流を良くし、ホルモンの生成や分泌、生殖機能の維持に関わります。
・カリウム
体内にたまりすぎたナトリウムを、排出してくれる効果があります。現代の日本においては、ナトリウムを容易に過剰摂取出来てしまう環境にあるため、多くの人にとって積極的に摂取したいミネラルです。
・鉄
赤血球の成分の一つです。貧血予防に欠かせません。
品種群
・白茎種
フランスやイタリアではポピュラーです。くたくたになるまで煮込んで食べると美味しいです。
・カラフル種
葉柄がカラフルです。「ブライトライト」という商品名で売られていることもあります。茹でたり酢漬けにすると、どんどん色落ちするので、色落ちが気になるなら、ほどほどにしましょう。
歴史
最後に、ふだんそうの歴史について学びましょう。
ふだんそうは、「一年中栽培でき、容易に手に入れられる」という意味から「普段草」、または、「栽培がしやすく、収穫してもどんどん生えてくる」という意味から「不断草」と呼ばれるようになった説があります。日本では、「スイスチャード」とも呼ばれます。英名はchardです。アカザ科ということで、ほうれん草の仲間になります。
原産地は近東または南ヨーロッパとされています。紀元前1000年頃にはシシリー島でギリシア人により栽培され、紀元前300年頃には、葉が濃緑色のもの、淡緑色のもの、赤色のものに分化していました。その後、ヨーロッパに一帯に広まっていきました。
中国には古い時代に西域から華南へ伝わり、7~9世紀ころの唐の時代には、すでに相当普及していたとされます。
日本には、17世紀かそれ以前に渡来し、17世紀末には各地で栽培がされていました。時代が進み、明治初年に洋種系一品種が導入されました。
ふだんそうは低温にも高温にも強く、夏にはつけ菜やほうれん草に代わる葉菜としても重宝されます。また、ふだんそうは地方名が多く、フダンナ、イツモナ、ツネナ、ネンジュウナ、不精菜などの呼び名があります。
参考文献
・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」2013年9月25日 246~248頁
・白鳥早奈英 板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 121頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養辞典最新版(初版)」2016年5月23日 98頁
関連リンク
・大場しゅんのエックス
(5) 大場しゅん@発達障害・青果・勉強と共に歩んでいます!(@shundaiba)さん / X