歴史
白菜の原産地は中国です。カブとチンゲン菜が交雑して出来た野菜とされています。
日本には、日清戦争に出兵した兵士が種子を持ち帰ってきた事で、本格的に日本人と白菜の関わりがはじまります。
当初はなかなか結球した白菜を作る事が出来ません(後述)でしたが、1924年に、宮城県の渡辺採取場で結球種の採種に成功、1950年にはタキイ種苗が世界で初めてF1品種の開発に成功するなど、多くの日本人にとって、馴染みのある野菜になります。
さらに、1988年にソウルオリンピックが開催された事で、韓国の食文化への関心が高まり、日本でもキムチが人気になります。
その影響を受けて、1999年には国内の漬物生産量トップがキムチになり、白菜の人気はさらに高まっています。
何故なかなか結球しなかったのか
実は、日清戦争に出兵した兵士が種子を日本に持ち帰って来る以前に、日本に結球白菜が持ち込まれていたという説もあります。日清戦争後はなおさら種子が持ち込まれました。
しかし、結球白菜を作れど作れど、その子孫は結球しません。それは何故なのか。答えは、他のアブラナ科の野菜と、簡単に交雑出来てしまう事にありました。
ましてや日清戦争の頃=明治時代頃は、春になると、日本中どこでも菜の花畑が見られました。菜の花はアブラナ科の植物。つまり、簡単に交雑してしまうのです(白菜も、冬に収穫しないで育ち続けると、春に花を咲かせます。ちなみに、白菜の花は食べる事が出来ます)。
他のアブラナ科の植物(野菜)と交雑して出来た子孫は、結球性の白菜が持っていた性質の「結球する」という性質を失い、今日多くの場面で見るような白菜とは違った植物になってしまったのです。
この理由がわかった後は、白菜だけを隔離して栽培するという工夫がとられ、無事に結球白菜の種子も採れるようになりました。
良品の見分け方
・外側の葉の緑色が鮮やかなもの
・持った時に重みを感じるもの
・葉が隙間なく詰まっていて、フカフカしていないもの
・切り口がみずみずしいもの
・芯の部分があまり盛り上がっていないもの
これらの特徴を持ったものを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
さらに・・・
・カットされたものの場合、切り口が黄色に近いもの(緑色になっていないもの)が良品の可能性が高いです。
白菜は、収穫されカットされても、なお生きています。さらに、野菜売り場の照明でも光合成が出来ます。つまり、切り口が緑色になってきているものは、光合成が進んでいる―売り場に置かれて時間が経っている―可能性が高いという事になります。
切り口が黄色に近い物の方が、新鮮である可能性が高いのです。
・白菜の黒い斑点は、栄養過多になった細胞に現われるものです。食べても問題ありません。
保存方法
常温保存の場合
※夏場は気温・湿度ともに高いので、常温保存はおすすめしません。
丸のままの場合は常温保存も出来ます。新聞紙に包んで、冷暗所で立てて保存してください。
冷蔵の場合
ペーパータオルに包んで、保存袋に入れて、冷蔵室に保存してください。
ちなみに、カットしたものを同じ方法でチルド室に保存すると、より鮮度が保たれる事があります。
これらの方法で、約1週間保存出来ます。
この方法の他に、カットしたものをラップで包み、冷蔵する方法もあります。この場合、4~5日ほど保存出来る事があります。
冷凍の場合
白菜をよく洗って、水気をしっかりと切ります。好みの大きさにカットし、冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存します。
この方法で、3~4週間保存できます。
齋藤瞬の体験談
白菜を保存する時に、あまりやらない方が良いと思われるのが、「二分の一カットなどの白菜を、ラップからはがさず、売られていた時のまま野菜室に突っ込む」事と、私は考えます。
包丁で料理に適したサイズなどにカットしたものをラップで包むのと違い、売られていたまま保存するのは、白菜にとって大変苦しい思いをさせ、劣化を速めてしまいます。
また、そもそも旬が秋・冬である白菜を、野菜室という、主に夏野菜を保存するのに適した温度・湿度になっている空間に保存するのは、白菜にとっては高温多湿過ぎます。
寒さに強い白菜は、料理に適した大きさにカットしたものであれば、「ペーパータオルまたはラップで包み、チルド室」というのが、最も白菜が喜ぶ(長持ちする)可能性が高いと、私は考えます。
栄養素
ビタミンC
ビタミンCには抗酸化作用があり、身体の老化を防止するのに役立ちます。
また、免疫力を高めて、風邪をひきにくくする効果が見込める他、美肌効果も持ち合わせています。
白菜には、特に多くのビタミンCを含んでいるわけではありませんが、多くの料理と相性が良い事から、白菜料理を食べる事で、ビタミンCを上手く補給出来る可能性があります。
ちなみに、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、料理をしていると一部が流失します。
流失したビタミンCを無駄なく摂取するには、スープや鍋料理などにすると良いです。
カリウム
体内の余計なナトリウム(塩分)を、体外に排出してくれる作用があります。そのため、カリウムを補給する事で、高血圧を防げる可能性があります。
またカリウムは、筋肉の収縮や神経伝達の機能にも関わり、上手く補給出来ると不整脈やけいれんの防止にもなります。
ここで補足
白菜は、約95%が水分です。そのため残念ながら、特に多量の栄養素を含んでいるわけではありません。
しかし先ほども述べたように、多くの料理と相性が良く、食に楽しみを与えてくれます。
また、可食部100gあたり12キロカロリーと低カロリーで、ダイエットにも向いている野菜です。
また、少量ではあるものの、カルシウム、鉄、ビタミンB₂、ナイアシンなども含んでいます。
健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせはあります。
柿と組み合わせると
二日酔い防止や肝機能強化につながる事があります。お酒を呑む方におすすめです。
しいたけと組み合わせると
がん予防、肥満防止につながる事があります。生活習慣病の対策に良いと思われます。
れんこんと組み合わせると
がん予防、胃腸の働きを整えるという効果があります。胃腸の健康管理に有益な組み合わせです。
こんにゃくと組み合わせると
肥満防止、高血圧・動脈硬化予防につながる事があります。体脂肪の多さが気になる方や、血管の健康を増進したい方に有効な可能性がある組み合わせです。
品種(一部)
白菜には、よく見かける事が多い「結球タイプ」の他に、半結球タイプ、結球しない不結球タイプがあります。
また、白菜といえばその大きさや重さ(3~4kg程度)イメージする方も多いと思いますが、近年の日本における家庭事情に合わせた、小ぶり(500g~700g程度)の品種も生み出されています。
さらに、もしムラサキキャベツに意思があるとしたら、「あなたは私の兄弟のようだ」と言いたくなるかもしれない、「ムラサキハクサイ」という品種も開発されています。
ここですべての品種の紹介は出来ませんが、私が個人的に興味を持った品種を、ここでいくつか紹介します。
べか菜
結球タイプの白菜を若採りしたものです。べか菜の祖先は、半結球タイプの白菜でした。
白菜でありながら耐暑性が強く、生育も早いという長所があります。
ムラサキハクサイ
奈良県のナント種苗が開発し、「紫奏子(むらさきそうし)」の名で販売されています。
鮮やかな紫色が特徴で、通常白菜に含まれないアントシアニンを含んでいます。
広島菜
不結球タイプの白菜です。広島県の特産品で、2kg程度に育ちます。
そのほとんどが漬物に使われ、ピリッとした辛みを持っています。
私は広島菜を食べた事はありませんが、漬物にする事で、その辛みが生きる姿が何となく想像できます。白米のお供になりそうな予感がして、いまこの記事を執筆しながら唾液の分泌が多くなってきています(笑)。
コラム―農薬が気になるなら
「農薬」と聞くと、悪いイメージが浮かぶ方も少なくないと思います。
しかし、いまの日本では、国の厳しい基準をクリアした農薬が、厳しい使用制限のもとに使われていて、よほどの事がない限り―少なくとも日本で作られた野菜・果物については―農薬による健康被害を心配する必要はないと考えます。むしろ、一定程度の農薬を用いる方が、多くの人々に幸福をもたらす事も多いです。
ですが、それでも、気になるものは気になりますよね。
この記事では白菜について紹介していますが、農薬による負の影響を少しでも避けたいのであれば、一番外の葉を使わない(捨てる)事で、負の影響を避けられる可能性が高まります。
また、農薬以外にも、土汚れや虫をしっかり落としたいのであれば、葉を一枚ずつ丁寧に洗うと、上手く落とせる可能性が高まります。
齋藤瞬のチャレンジクッキング!―「ブリと野菜の炒め物」
前置き
今回の料理を作る時に、私は、白菜を使う事は決めていたのですが、それに組み合わせる食材に、少し迷いがありました。
最初はひき肉を使おうと考えていましたが、スーパーでブリの切り身が売られているのをみて、私の心はブリの方に動かされました。
そこに、にんじんとラー油を組み合わせれば、とても美味しい炒め物が出来る、私はそう思い、今回の料理に着手しました。
材料(食材)2人前程度
・ブリの切り身・・・150g程度
・白菜・・・100g以上あると、食べ応えが生まれます。
・にんじん・・・二分の一本
・ラー油・・・お好みの量
・塩コショウ・・・お好みの量
もたらされると考えられる健康効果
ブリを使っているので、タンパク質を上手く摂れると考えられます。
また、白菜のカリウムが、塩分の悪影響を下げてくれると考えられる他、油を使いつつ、にんじんを食べるので、β―カロテンの吸収も良くなると考えられます。
身体に筋肉をつけつつ、高血圧や肌の調子にも気をつけたい方に、有効な料理かもしれません。
工程
ブリの下処理(骨を取るなど)をする
包丁で一口サイズに切ると、料理が良い感じで仕上がります。
白菜を食べやすい大きさにカットする
にんじんを細めに切る
もちろん、いちょう切りでもさいの目切りなどでも良いです。
ちなみに、皮はむかなくてもまったく問題ありません。汚れだけ落としましょう。
フライパンを熱して、油をひく
油が熱されたら、ブリを炒める
ブリにある程度火が通ったら、白菜とにんじんも投入する
白菜がしんなりしたあたりで、塩コショウとラー油を絡める
火を止めて、皿に盛ったら完成です!
食レポ(感想)
言い訳になってしまうのですが、この料理を作っている時に、別の料理も同時進行で作っていたので、炒める時間が長めになってしまし、ブリが硬くなってしまいました。
しかし、皿に盛った時の見た目は、白菜とにんじんのアクセントもあり、とても美味しそうに見えました。何より、香りがとても良かったです。
いざ口にしてみると、ブリこそ硬くなってしまったものの、味は損なわれておらず、濃厚な味わいがしました。
白菜にもブリのうま味が染みていて、とても食べやすくなっていました。
さらに、ラー油の辛さもとても良く、我ながら定食屋さんでご飯を食べている気分になれました。
この記事の参考文献
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 212頁
・竹下大学著 株式会社エクスナレッジ発行「野菜と果物 すごい品種図鑑(初版)」2022年7月12日 96~103頁
・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」 2013年9月25日 177~181頁
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 137~143頁
・板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「からだにおいしい 野菜の便利帳」2021年11月15日 106~107頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 98頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える! 野菜の教科書(初版)」2017年6月2日 72~73頁