ぎんなん―食べ過ぎに注意の、秋を感じさせる美しい色を持つ食材

ぎんなん 熊本県産 その他野菜など
ぎんなん 熊本県産

ぎんなんとは

ぎんなんとはイチョウ科イチョウ属に属する、イチョウの種子です。よくイチョウの「実」と表現される事もあるぎんなんですが、実際には、外側の硬い殻の部分も含めて、種子となります。

時々悪臭を感じてしまう事がある一方で、栄養価が高い事でも知られ、秋になると食べる事を楽しむ方もいます。

簡単な歴史

一属一種の珍しい単独種で、2億5000万年以上にも渡る気候変動に耐えて今日まで生き延びて来たため、「生きた化石」とも呼ばれます。

高等植物で、初めて精子を持つ事が発見され、種子植物では珍しく、精子で繁殖します(1896年に平瀬作五郎が発見)。

中国原産の裸子植物で、日本には鎌倉時代から室町時代に、中国から伝えられたと考えられています。

ぎんなんをつけるイチョウですが、イチョウという和名は、葉の形が水鳥の足に似るため、中国で「鴨脚(ヤーチャオ)」と呼ばれたものが、イチョウと変化したとされています。なお、ぎんなんは実の核が白いため、「白果(はっか)」と呼ばれる事もあります。

良品の選び方

・表面が白くて滑らかなもの

・見た目の割に重みを感じるもの

これらの特徴を持つぎんなんを選ぶと良い事が多いです。なお、振ると音がするものや、殻が黒ずんでいるものは、選ばない方が良い事が多いです。

保存方法

殻を割ったぎんなん
殻を割ったぎんなん

冷蔵の場合

殻つきのまま新聞紙に包むか紙袋に入れ、冷蔵庫で保存しましょう。上手く行くと、数カ月以上保存出来る事もあります。

冷凍の場合

殻をむいて塩茹でし、小分けにして冷凍しましょう。薄皮をむいておくと、なお便利です。

毒性

ぎんなんには、「メチルピリドキシン」という成分が含まれています。メチルピリドキシンには、摂取し過ぎると下痢、鼻血、けいれんなどを引き起こし、最悪の場合死に至るという負の効果があります。そのため、耐性が低い小さなお子さんは、5歳くらいまでは食べるのを控えた方が良いと言えます。また、5歳を過ぎても、食すのは一日最大5個程度までに留めておいた方が良いでしょう。

栄養素

先ほど、ぎんなんの毒性についてお話ししましたが、ぎんなんには毒性がある一方で、人間にとって有益な栄養素も豊富に含まれています。食べ過ぎに気をつければ、美味しい上に栄養素の補給にも役立つ、優秀な秋の味覚といえます。ここではぎんなんから摂取できる代表的な栄養素について解説します。

ビタミンB₁

糖質の代謝に強く貢献するビタミンです。適切に摂取する事で、糖質から上手くエネルギーが生み出され、ストレス軽減や疲労回復につながる事があります。

ビタミンC

抗酸化作用があり、がんや動脈硬化予防などに貢献するビタミンです。コラーゲンの生成にも関わり、美肌効果があります。その他、風邪などの感染症予防にも有効です。

ビタミンE

若返りのビタミンともいわれます。抗酸化作用があり、がんや動脈硬化の予防、脳の若返りなどに役立つ事があります。

その他、血液の循環を良くし、冷え性や肩こりの改善に役立ち、さらにはホルモンの分泌にも関わるので、生殖機能を正常に保ってくれる働きもあります。

パントテン酸

たんぱく質、糖質、脂質の三大栄養素の代謝を助ける他、善玉コレステロールの合成を助けます。

カリウム

体内の細胞の浸透圧を調節する効果があります。体内の余分なナトリウムを体外に排出してくれるため、高血圧や脳卒中の予防につながる事があります。

またカリウムは、筋肉の収縮や神経の正常な情報伝達にも必要なため、不足すると不整脈やけいれんを引き起こしてしまう事があります。

健康効果

ぎんなんを適度に食べる事で、以下の健康効果が生まれる可能性があります。

・がん予防

・老化の抑制

・風邪や感染症の予防

・高血圧の予防・改善

コラム―幼少時の苦い思い出

確かあれは、私がまだ3歳の頃だったと記憶しています。母方の親戚の家に、何らかの用事があって、母親たちと出向いた時でした。

親戚の家のストーブに、何だか美味しそうな色と形をした実らしきものがありました。幼少の頃の私はそれに興味を持ち、「ねえねえ、これなあに?」と聞いたような記憶がかすかにあります。

すると親戚の男性は、「これはぎんなんっていうのだよ」と教えてくれました。そしてその男性はぎんなんを割って、美味しそうに食べています。

私は幼少の頃から食欲旺盛な人間だったのと、まだ幼かった事もあり、「僕も食べたい!」と言いました。

しかし、読者のみなさまの多くはすでに結末がわかると思いますが、ぎんなんは5歳頃までの子どもには、与えない方が良い食べ物です。親戚の男性も母も、もちろんだめと言いました。

親戚の男性も母も、私に対して相当優しくかつ易しい言葉で説明してくれたのを覚えていますが、私はその件があってからしばらく経つまで、食べられなくて残念だという気持ちを持ち続けていました(笑)。

実際に試食―試食までの工程

「ぎんなんとわかめのラー油炒め」にして食べてみました!

ぎんなんとわかめのラー油炒め 料理途中
ぎんなんとわかめのラー油炒め 料理途中

ぎんなんだけを食べるという事も実行してみましたが、ここではひと手間加えて、ぎんなん料理を作って食べてみる事にしました。

ぎんなんにわかめとラー油を組み合わせるという、少し贅沢なおかずを作ってみました。実際に作ってみると、やはりぎんなんの下処理がなかなか大変でしたが、美味しく作る事が出来ました。ここではその工程などを見て行きましょう!

材料(1人前)

・ぎんなん・・・4個程度

・乾燥わかめ・・・乾燥状態で約5g

・サラダ油・・・適量

・ラー油・・・お好みの量

・塩こしょう・・・お好みの量

工程

1.ぎんなんの殻を割って、中身を取り出す

※私はかなづちで殻を割りましたが、はっきり言って殻は相当硬いです。殻を割る時に大きな音が出る事と、ケガには要注意です。

2.乾燥わかめを水で戻す

※数分程度で戻せる事が多いです。水で戻したら、余分な水分をしっかりと切ってください。

3.焦げつきにくいフライパンを温め、サラダ油をひき、ぎんなんを炒める

※高確率で油はねを起こすので、やけどなどに注意して下さい。

4.ぎんなんを1分半程度炒めたら、わかめも投入する

※油はねに気をつけてください。

5.わかめをサッと炒めたら、ラー油と塩こしょうで味つけする

6.火を止めて、皿に盛りつけて完成です!

試食と感想

ぎんなんとわかめのラー油炒め
ぎんなんとわかめのラー油炒め

ぎんなんの下処理は手間がかかる上、油はねによるやけどにも注意しなくてはならない。そんな難所がある今回の料理ですが、完成するとその苦労は吹き飛びます。

まず香りが良いです。大変香ばしい香りが鼻から脳に伝わり、香りだけでお腹が満たされる感じがあるほどです。

実際に口に入れて食べてみると、うま味と塩気、辛味が見事に調和して、口の中に幸せが

広がる感がありました。肉や魚を使っていないのに、ご飯のおかずとして十分にその役割を果たせそうな味でした。また、お酒を楽しむのが好きな方には、おつまみとしても使えそうと思いました。

補足

殻から中身を取り出す際、薄皮は気にしなくても(ついたままでも)まったく問題ありません。もちろん、見た目を良くしたい、あるいは、丁寧に料理を作りたいのであれば、薄皮を除去するのももちろん良いです。

参考文献

・池上文雄著 一般社団法人農山漁村文化協会発行「図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典 果実・キノコ・海藻・魚介類50種」2019年5月15日 90~92頁

・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 41頁

・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える!野菜の教科書」2017年6月2日 41頁

・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 123、239~264頁

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