セリ―春の七草の一つ、独特の香りが魅力的な歴史ある野菜

宮城県仙台産「セリ」 葉茎菜類・花菜類
宮城県仙台産「セリ」

セリとは

セリとは、セリ科セリ属に属する野菜です。葉菜類に分類される事が多いですが、香味野菜扱いされる事もあります。旬は1~4月頃という事が多いです。アジアやオセアニアなどで、古くから利用されてきました。独特の香りがあり鮮やかな緑色をしていて、主におひたしや鍋の青味、汁物の具材などに利用されます。なお、セリは漢字で「芹」と書き、英語では「water dropwort」と言います。

簡単な歴史

日本、中国大陸、東南アジア、オセアニアに広く分布し、湿地帯などに自生しています。中国ではすでに、紀元前17~12世紀には野菜扱いされていたとされます。また、朝鮮半島に住む人々にとって、キムチを作る時に欠かせない野菜でもあります。

日本においても古くから利用され、「日本書紀」にはすでにセリの記述がありました。また、セリは春の七草の一つで、少なくとも江戸時代には、七草がゆとしてセリが食べられていました。

古くから人々と重要な接点があったセリですが、水湿地でなければ生育が上手く行かないという難点もあり、多くの人々に好まれる野菜でありながら、大衆野菜の仲間入りは出来ずにいます。しかし、香りと味の良さはやはり良く、今日においても廃れる事なく、人々に利用、栽培され続けています。

良品の見分け方

※ここで紹介する特徴を持つセリを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。

・葉の緑色が鮮やかなもの

・葉がみずみずしいもの

・茎がシャキッとしているもの

(茎がしおれていたり、葉が変色しているものは、鮮度が落ちている可能性が高いため、選ばない方が良いでしょう)

保存方法

セリの根側
セリの根側

冷蔵の場合

根を湿らせたペーパータオルなどに包み、保存袋に入れて、冷蔵庫の冷蔵室に立てて保存します。なるべく2~3日で使い切りましょう。

冷凍の場合

セリは基本的に冷凍しない方が美味しく食べられますが、冷凍したい場合は、小さめに切ってラップで小分けし、冷凍用保存袋に入れて冷凍室で保存すると、幾分か長く保存出来ると思われます(筆者の手元に、セリの冷凍保存についての詳しい文献がないため、自信を持っての発言は出来ませんが、他の葉野菜や香味野菜の冷凍保存法から推測すると、セリも一応、冷凍保存が可能と考えられます)。

栄養素

セリの拡大画像
セリの拡大画像

セリの特筆すべき栄養素は、ビタミンKです。他にも、β-カロテン、ビタミンC、カリウム、鉄などをよく含みます。ここではそれらについて説明します。

ビタミンK

骨を強くするビタミンです。血液の凝固作用もあるため、万が一出血した時に、止血するのに役立ちます。

β-カロテン

体内でビタミンAに変わります。抗酸化作用があり、がんや動脈硬化予防などに役立ちます。また、皮膚や粘膜、目の健康を保つのにも欠かせません。不足すると、肌荒れ、視覚障害、夜盲症などを引き起こしてしまう事があります。

ワンポイントアドバイス

ビタミンK、β-カロテンともに、油と一緒に摂ると、身体によく吸収されます。そのため、適量のセリの天ぷらを食べる事は、摂取のために有効といえます。

カリウム

体内の細胞の浸透圧を調節します。高血圧、脳卒中、むくみなどの予防に役立ちます。またカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達にも関わるので、不足すると不整脈やけいれんなどを引き起こしてしまう事があります。

赤血球のヘモグロビンに含まれ、全身に酸素を行き渡らせるのに強く関わります。そのため、鉄の不足はめまい、頭痛、食欲不振、集中力低下などを引き起こしてしまう事があります。

セリの健康効果

セリは健康に関して、以下で挙げる事に役立つ可能性があります。

・がん予防

・老化の抑制

・食欲の増進

・貧血の予防、改善

セリの試食レポート

サッとアク抜き
サッとアク抜き

前置き

私は過去に、まったくセリを食べた事がない、というわけではありませんが、食べる事が出来た機会は少なく、正直、その味や香りをなかなか思い出す事が出来ませんでした。

私はこうして当ブログで、主に青果に関する情報発信をしていますが、はっきりいって、セリについての記事を執筆する機会がやってくるとは思っていませんでした。何故なら、セリはいわゆる「名脇役」的な扱いを受ける事が多い野菜で、私が実際に購入して見た目や香り、味などを確かめる機会は、そう簡単には得られないだろうと思っていたからです。

しかし幸運にも、自宅近くのスーパーでセリが売られており、このチャンスを逃さずに購入する事が出来ました。手元に、記事の執筆に必要な最低限度の文献もあったので、今回こうして試食と執筆が出来ました。

試食

美味しくいただけました
美味しくいただけました

前置きが長くなってしまいましたが、今回私は生食と加熱しての試食を試みました。生食の方ですが、本当に、購入したセリの先端を軽い気持ちで切り取り、口に運んでみました。すると口の中に、何だか懐かしい味が広がりました。限りなくミツバに近い味と香りを感じました。身体がシャキッと引き締まり、それこそ、春の目覚めにふさわしい野菜だと思えました(試食した時点では1月と冬でしたが)。

加熱しての試食についてですが、こちらは本当に、沸騰したお湯に10秒もくぐらせない、超短時間の加熱とアク抜きをしての試食でした。根の方から試食しましたが、ずばり表現すると、「食べやすくなったにんじん」という感じの味でした。

まとめ

私にとって、ちょっと遠い存在のセリでしたが、意外と食べやすくて香りも良く、今回の試食で一気に親しみが持てるようになりました。

参考文献

・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」2013年9月25日 279~280頁

・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 118頁

・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える! 野菜の教科書」2017年6月2日 110頁

・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 25頁

・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ 株式会社池田書店発行「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 94~97、102~103、109、112頁

リンク

当ブログ(セリと同じ、セリ科の野菜)

当ブログ(野草・山菜・キノコ関連)

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