玉ねぎとは
玉ねぎとは、ユリ科ネギ属に属する野菜(葉茎菜類、ただし根菜として扱う方もいます)です。日本では年間を通して収穫されますが、季節によって採れる場所や品種が異なります。西日本では春が旬という事が多く、北海道で採れるものは秋が旬という事が多いです。丸のまま焼いて食べても美味しく食べる事が出来、時に料理の隠し味としても活躍します。さらに、新玉ねぎを生食して楽しむ事もあるなど、活躍の幅が広い野菜です。
簡単な歴史
玉ねぎの原産地は中央アジア付近とされます。そこから西へと伝来していき、古代エジプトでは、ピラミッド建設に関わる労働者の対価として、大根やえんどう豆などとともに、玉ねぎが支給されたとされます。古代ギリシャやローマでは、栽培もされていました。
その後時代が進み、南ヨーロッパでは、刺激の少ない品種の玉ねぎが生まれ、東ヨーロッパでは刺激の強い品種が生み出されました。アメリカには16世紀以降に伝わり、様々な品種が生まれました。
日本にタマネギが導入されたのは、明治になってからと意外と歴史は新しく、アメリカより北海道と大阪に伝わりました。「玉ねぎはコレラ対策に有効」などの不確実な情報が、玉ねぎの普及を助けた事なども相まって、現代日本ではメジャーな野菜となりました。
良品の見分け方
※ここで紹介する特徴を持った玉ねぎを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
・きれいな球体をしているもの
・頭部を押してみて、硬さがあるもの(やわらかいものは、中身が腐っている事や、空洞が出来てしまっている事があります)
・乾燥しているもの
・持ってみて重みを感じるもの
・皮にハリとツヤがあるもの
・芽が出ていないもの
・ひげ根が出ていないもの
コラム―普通は避けられるけど
基本的に、芽が出ている玉ねぎは、味や鮮度が落ちているものと扱われ、避けられる事が多いです。現に、私がかつて勤務していて青果店でも、芽が出ているものは破棄されました。
しかし、かつて、野菜博士の相馬暁先生は著書「相馬博士の旬野菜読本 朝取りホウレンソウは新鮮か?」(農山漁村文化協会発行 2005年1月20日)の34~36頁で、芽をヌタにする事や、長ネギの代わりにする事、豆類と一緒に食べる事をおすすめしています。
私自身は玉ねぎの芽を食べた事がないので、その味や香りなどはわからないのですが、玉ねぎは、じゃがいもと違い、芽が出ても食べられる事は、知識としては知っています。
確かに玉ねぎを放置して芽を出させると、長ネギにも似た色や形の芽が出て来るので、意外と美味しいのかもしれない、相馬先生の本を読んで、そう思いました。
保存方法
常温の場合
寒い時期は冷蔵庫に入れなくても保存出来ます。皮つきのまま、ネットに入れて冷暗所で保存して下さい。
冷蔵の場合
ペーパータオルに包み、ポリ袋に入れ、野菜室で保存します。これで1週間程度保存出来る事もあります。カットしたものは、ラップに包んで、冷蔵室で保存して下さい。なるべく早く使い切りましょう。
冷凍の場合
皮をむき、水洗いをして、好みの大きさにカットします。冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存します。この方法で、約1か月保存出来る事もあります。
加熱してから冷凍保存する場合は、みじん切りにしてあめ色になるまで炒めた後、粗熱を取り、ラップで小分けして、冷凍庫で保存します。
栄養素
玉ねぎは、特定の栄養素をたくさん含んでいるというわけではありませんが、以下に紹介する栄養素を少量ながらも含んでいます。
ビタミンB₆
たんぱく質の代謝に強く関わります。不足すると代謝異常になってしまう事があります。適度に摂取すると、皮膚や粘膜の調子を整えて、アレルギー症状をやわらげる事があります。
ビタミンC
美しい肌を作るのに必要なコラーゲンの生成に関わります。また、抗酸化作用があり、がんや動脈硬化予防などにも有効です。さらに、白血球の活動を高めるので、風邪などの感染症予防につながる事もあります。
カリウム
細胞の浸透圧を調節する能力があります。また、高血圧や脳卒中などの予防にも役立ちます。身体のむくみの原因の一つである、体内の余計なナトリウムを体外に排出する効果もあります。
さらにカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達にも関わるので、不足すると不整脈やけいれんなどを引き起こしてしまう事があります。
リン
摂取のし過ぎは、骨などを弱くしてしまう事がありますが、その一方で、細胞内の核酸の成分になるなどの働きがあります。
その他
玉ねぎに含まれる「イソアリイン」は、料理の「コク」に関わる事があり、料理をより美味しくしてくれます。また、皮に含まれる事が多い「ケルセチン」は、一定量、食用部分にも含まれます。このケルセチンには、体内の脂肪を排出する他、脂肪をつきにくくする可能性が指摘されています。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)はあります。
シジミと組み合わせると
肝臓病の予防につながります。
ごぼうと組み合わせると
糖尿病の予防などにつながる事があります。
セロリと組み合わせると
高血圧予防などに役立つ事があります。
トマトと組み合わせると
がん予防などにつながる事があります。
なお、トマトについては以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別記事に飛びます)。
品種(一部)
湘南レッド
赤紫色をした玉ねぎです。辛み、香りともにマイルドで生食しやすいです。
葉玉ねぎ
まるで長ねぎのように見える見た目をしています。長ねぎと似たような使い方が出来、甘み、うまみ、ねばりがあります。
小玉ねぎ
ペコロスやペティオニオンといった呼ばれ方もされます。丸のまま煮込むなどして食べると美味しいです。
ワンポイントアドバイス
玉ねぎを生食したいが、水にさらすと栄養素が逃げる・・・、そういう時は、切った玉ねぎを30分程度そのまま放置すると良いです。時間はかかりますが、栄養素はあまり逃げず、辛味も緩和されます。
参考文献
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 127~131頁
・竹下大学著 株式会社エクスナレッジ発行「野菜と果物 すごい品種図鑑(初版)」2022年7月12日 64~67頁
・青髪のテツ著、わたなべみきこイラスト 株式会社KADOKAWA発行「スーパーのエキスパート店員が教える おいしい野菜まるみえ図鑑(初版)」2023年2月10日 84~85頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 218頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 61頁
・名取貴光監修 株式会社高橋書店発行「新・野菜の便利帳 健康編」2021年8月30日 82~83頁
・石原結實、牧野直子著 株式会社KADOKAWA発行「知って驚くファイトケミカル 健康野菜大全(初版)」2021年4月1日 5~24頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える! 野菜の教科書」2017年6月2日 90~91頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬 おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 28、38頁
・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ 株式会社池田書店発行「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 98~103、112、114頁