じゃがいもとは
じゃがいもとは、ナス科に属する野菜(根菜類)です。旬は春、秋ですが、南北に長い日本列島では、一年中日本のどこかで栽培や収穫がされています。ちなみに、ナス科という事で、ナスやトマト、ピーマンなどと仲間です。
簡単な歴史
ヨーロッパ
南米アンデス地方が原産で、近世近くになってヨーロッパに伝わります。しかし、当初は食べ方がよく分からず、エリザベス一世は芽を食べてしまい(じゃがいもの芽には有毒成分ソラニンが含まれています)、中毒になってしまいます。なお、この件のために、じゃがいもを紹介したドレーク船長は危うく死刑になってしまうところでした。
ヨーロッパで当初、なかなか広まらなかったじゃがいもに目をつけたのは、ドイツ(プロシア)のフリードリヒ大王でした。フリードリヒ大王は、じゃがいもの生育期間の短さと、太陽光があまりなくても育つ特性、さらに三十年戦争で荒廃した世を立て直すのに、じゃがいもを食べる事を奨励しました。
日本
日本には、慶長年間(1596~1614)に、オランダ人によって持ち込まれました。ヨーロッパに伝来してから30~40年で日本にも伝来した事は、この時代としては相当なスピードであるといえます。冷害を救う貯蔵作物として、注目されました。
しかし、日本で本格的にじゃがいもが栽培され始めたのは、明治になってからです。北海道函館に住んでいた川田龍吉男爵が、自分の農場でいちごやセロリ、レタスなどと共に栽培し、客にふるまいはじめました。ちなみに、男爵いもはアーリーローズと呼ばれる品種から登場した変種を指しますが、その変種を日本で男爵いもと呼ぶのは、川田男爵が作り始めた事によります。
良品の見分け方
※これらの特徴を持つじゃがいもを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
※芽が出ているものや、皮が緑色になっているものは避けて下さい。有毒物質ソラニンを含みます。ソラニンの毒性は強烈です。うっかり食べてしまった方の体験談を聞いたことがありますが、相当ツラい目にあうそうです。
・ずっしりと重くてかたいもの
・整った球形をしているもの
・芽が出ているものは、取り除けば食べる事が出来ます。しかし、発芽前のものに比べると、味が落ちています。
保存方法
常温または冷蔵の場合
15℃程度の環境が作れる場合、ネットなどに入れて常温保存出来ます。また、凍らない程度に寒い環境を作れると、発芽せずに相当長期間保存可能です。
冷蔵の場合は、ペーパータオルに包み、ポリ袋に入れて野菜室に保存します(4℃以下にすると上手く保存出来なくなるため)。この方法で、1か月程度保存出来る事もあります。
冷凍の場合
茹でて好みの大きさにカットして、マッシュします(潰します)。粗熱を取り、ラップで小分けにして、冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存します。これで約1か月保存出来ます。
栄養素
じゃがいもには、ビタミンB₁、B₆、ナイアシン、ビタミンC、カリウムが良く含まれています。以下ではそれらについて解説します。
ビタミンB₁
糖質の代謝に強く関わるビタミンです。不足すると疲労感やイライラにつながる事があります。ビタミンB₁を上手く摂取する事で、糖質を円滑にエネルギーに変換出来る事につながるので、体に元気が出る事があります。
ビタミンB₆
タンパク質の代謝に強く関わります。皮膚や粘膜の状態を整え、アレルギー症状を緩和するなどの効果があります。
ナイアシン
三大栄養素(タンパク質、糖質、脂質)の代謝を助ける他、アルコールを摂取した後に発生するアセトアルデヒドの分解を助けます。この事から、二日酔いになる可能性を下げてくれます。また、ナイアシンは頭痛や冷え性の改善に役立つ事もあります。
ビタミンC
抗酸化作用があり、がんや動脈硬化を防ぐのに役立ちます。また、肌を美しくするのにも貢献します。さらに、風邪などの感染症予防につながる事もあります。
カリウム
筋肉の正常な収縮や、神経の情報伝達を上手く行う作用があるので、不整脈やけいれんを防ぐ事があります。
また、体内の余分なナトリウムを体外に排出し、高血圧や脳卒中の予防にもつながります。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する以外にも、健康に役立つ組み合わせ(食べ合わせ)はあります。
キウイフルーツと組み合わせると
がん予防や高血圧予防などに役立ちます。
キウイフルーツについては以下をお読み下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)
白菜と組み合わせると
肥満防止や胃潰瘍の予防などにつながる事があります。
白菜については以下をお読み下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
レモンと組み合わせると
ストレスの緩和などに役立ちます。
酢と組み合わせると
品種(一部)
じゃがいもは日本や世界各地で、相当多くの品種が存在します。ここではその一部しか紹介出来ませんが、ご自身で様々な品種と出会う楽しみがあります。
男爵
果肉が白っぽく、加熱すると煮崩れするので、それを逆手に取り、粉ふきいもやマッシュポテトにすると、大変美味しく食べる事が出来ます。
メークイン
長卵形で、淡い黄色の果肉をしています。煮崩れしにくいので、煮物などで美味しく召し上がれます。
とうや
果肉が黄色で粘質です。煮崩れしにくいので、煮物などで。
キタアカリ
明るい黄色の果肉が特徴的です。近年の人気品種です。男爵同様、粉ふきいもやマッシュポテトに向いています。
しかし、私や私の家族は、このキタアカリを敢えてカレーライスや肉じゃがに使う事があります。煮込み過ぎない事で、煮崩れを「少しだけ」起こさせ、料理にじゃがいも(キタアカリ)のうま味を溶けさせつつ、崩れず残っているじゃがいもも楽しむという、良いところ取りをするのです。
参考文献
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 222~227頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる 野菜のトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 207頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 68~69頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日発行 69頁
・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 94~95、98~103、112頁