にんにくとは
にんにくとは、ユリ科ネギ属に属する野菜(香味野菜)です。旬は5~7月頃ですが、乾燥させたものや加工されたものなどが、年間を通して出回っています。その臭気から敬遠する方もいますが、その一方で、古くからスタミナをつけてくれる存在として薬草扱いされ、近年に入ると殺菌作用などが注目されはじめ、まさしく熱い野菜です。
簡単な歴史
原産地は中央アジアまたは、西アジアとされる事が多いです。古代エジプト(紀元前3200~2700年頃)において、すでに大根や玉ねぎとともに、食用、栽培されていた記録があります。また、ピラミッド建設に携わる労働者に、給料として定期的ににんにくが与えられていたとされます。この説は決して空想の域に留まっているわけではなく、実際に壁画ににんにくを食べながら労働をしている人々の絵が描かれています。
その後、ローマやギリシャにも伝わります。ローマでは兵士などがにんにくを食べていたようですが、あまりに精力がつきすぎる事から、一部の人々の間では避けられていました。
中国には紀元前100年頃に伝えられ、高血圧や強精剤の薬として利用されます。日本には奈良時代になって伝えられたとされます。紫式部の源氏物語に「極熱の薬草」としてにんにくが登場するなど、他の地域の例に漏れず、精力剤として見られる部分が大きかったようです。
しかし、日本においては、にんにくは必ずしも歓迎されていたわけではなかったようです。にんにくの語源は仏教用語の「忍辱」に由来しますが、これは、にんにくの健康効果を得るためには、その臭気を耐え忍んで食べる必要がある事を意味していました。
そしてそもそも、淡白な味つけを好んでいた当時の日本の人々にとって、口に合わないと感じる人も多かったようで、軒に吊るして邪気を払うための利用等に留まる事も多かったようです。
ですが、そのような中でもにんにくは廃れる事なく生き延び続け、近年になってにんにくに含まれるスコルジニンの疲労回復、代謝促進作用が注目され始める他、殺菌作用やコレステロール値を下げる効果が発見されるなど、にんにくの知られざる能力が世界的に注目されるようになっています。
良品の見分け方
※ここで紹介する特徴を持つにんにくを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
・手に持った時に見た目よりも重みを感じるもの
・形が整っているもの
・一片一片の大きさが揃っているもの
(隙間があるものは、水分が抜けている、古いものの証拠なので避けましょう)
保存方法
常温の場合
ネットに入れて、冷暗所に吊るして保存します。
冷蔵の場合
丸ごとまたは、一片ずつ薄皮がついたままペーパータオルに包み、冷凍用保存袋に入れて、チルド室で保存します。これで2か月ほど保存出来る事もあります。
なお、むきだしのまま普通に冷蔵室や野菜室に保存するのは避けましょう。芽が出るのが早くなってしまう他、悪臭の元になります。
冷凍の場合
みじん切りやすりおろしにして、ラップで小分けして冷凍用保存袋に入れて冷凍室で保存します。
または、2~3片ずつラップで包んで、冷凍用保存袋に入れて冷凍室で保存します。
どちらの方法も、半年程度と、長期間保存出来る場合があります。
栄養素

にんにくは栄養価が高い野菜で、特にビタミンB₆はすべての食材と比較してもトップクラスの含有量です。他にも、ビタミンB₁、カリウム、リンなども程よく含みます。ここでは主にそれらを中心に解説します。
ビタミンB₆
たんぱく質の代謝に強く関わります。不足すると代謝異常になってしまう事があります。適度な摂取は、皮膚や粘膜の状態を整え、アレルギー症状を緩和する事があります。
ビタミンB₁
糖質の代謝に強く関わります。適度な摂取は、疲労回復やストレス緩和に役立つ事があります。
カリウム
細胞の浸透圧を調節する作用があります。高血圧、脳卒中、むくみなどの改善に役立つ事がります。またカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達に関わるので、不足すると不整脈やけいれんを引き起こしてしまう事があります。
リン
骨や歯を構成するミネラルです。細胞内の核酸の成分にもなります。摂り過ぎは体内のカルシウムを体外に排出してしまうので注意しましょう。
その他
にんにくは野菜には珍しく、タンパク質をよく含みます。タンパク質は筋肉や臓器を構成するのになくてはならない栄養素です。また、食物繊維もよく含みます。にんにくはどちらかというと水溶性食物繊維をよく含むので、適度な摂取は血糖値やコレステロール値低下などに役立ちます。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)はあります。
しいたけと組み合わせると
がん予防などにつながる事があります。
玉ねぎと組み合わせると
血液をサラサラにするなどの効果があります。なお、玉ねぎについては以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
イカと組み合わせると
強精・強壮効果などがあります。
白菜と組み合わせると
胃腸を丈夫にする事などに役立つ事があります。なお白菜については、以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
品種(一部)
にんにくの芽

葉の後に出る、にんにくの花茎です。緑黄色野菜扱いされます。筆者は個人的に、このにんにくの芽が大好物です。食べると元気が出て来る感じがあります。
フルーティーにんにく
熟成発酵させたものです。多くの方がにんにくに対して抱くイメージとは違い、甘みがあります。また、普通のにんにくよりも、抗酸化力が数倍アップしています。
にんにくの芽のカレー粉炒め
齋藤瞬のチャレンジクッキングの時間がやって参りました!今回は「にんにくの芽のカレー粉炒め」に挑戦します。
この記事はもちろんにんにくという野菜がテーマなので、にんにくの実の方を使った料理にチャレンジする事も考えましたが、私個人的ににんにくの芽の方が敷居低く料理出来る気がしたので、今回はにんにくの芽を使った料理をする事にしました。
より美味しくするために、豚ブロック肉、ニンジン、じゃがいも、塩コショウも使います。それでは、材料の方から見て行きましょう。
材料(数人前)
・にんにくの芽・・・市販のもの1~2パック
・豚ブロック肉・・・約300g
・にんじん・・・1~2本
・じゃがいも・・・1個程度(メークインなどの加熱調理向きのものだと尚更良いです)
・カレー粉・・・お好みの量
・塩コショウ・・・お好みの量
・サラダ油・・・適量
工程
1.にんにくの芽を4~5cm程度の大きさに切る
2.にんじんを食べやすい大きさに切る
3.じゃがいもはサイコロ状に切る
難しければ「食べやすい大きさに切る」でも良いです。
4.豚ブロック肉を食べやすい大きさに切る
今回はより美味しくするためにブロック肉を使っていますが、豚バラ肉などを使ってももちろん良いです。
5.フライパンまたは中華鍋を熱して、サラダ油をひいて温める
6.サラダ油が温まったら、先に豚ブロック肉を炒める
7.豚ブロック肉に少し火が通ったら、にんにくの芽、にんじん、じゃがいもも同じフライパン(中華鍋)で炒める
8.具材にしっかりと火が通ったら、カレー粉や塩コショウで味つけをする
特に豚ブロック肉にはしっかり火を通しましょう(通さないと食中毒の原因になります)。
9.皿に盛りつけて、完成です!
試食と感想

豚ブロック肉の脂に、にんにくの芽たちがしっかりと絡んで、美味しそうにコーティングされていくのを見て、私の食欲は高まりました。カレー粉も良い香りを演出します。
出来た炒め物を口に運ぶと、口中に美味しさが広がりました。肝心のにんにくの芽は、歯ごたえを失っておらず、食べ応えがあり美味しくいただけました。他の具材も、味が染みて良い味になっていました。
補足
今回は具材を炒めるのにサラダ油を使いましたが、サラダ油ではなく、バターを使っても美味しくなると思いました。
参考文献
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 47~52頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 142頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 226頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える! 野菜の教科書」2017年6月2日 122~123頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 87、268頁
・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ 株式会社池田書店発行「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 78~81、94~95、98~101、112、114,116~117頁