「ナス」とは
ナスは、ナス科に属する野菜です。原産地はインド東部です。
ナスは、日本では一年草で、越年出来ませんが、熱帯地方では多年草になり、越年して高木状になります。
夏野菜として扱われる事も多いナスですが、秋でも美味しく楽しめる野菜です。
簡単な歴史
日本には8世紀頃に、中国から直接、または朝鮮半島経由で持ち込まれました。
持ち込まれると、多くの日本人に愛され、全国各地で様々な品種(地方種)が生み出されました。
後述するように、栄養価の面ではあまり恵まれないナスですが、多くの料理と相性が良い事から、すでに1600年には、現在の静岡県三保で促成栽培がはじめられるなど、日本の食文化になくてはならない存在です。
良品の見分け方
※これらの特徴をもったナスを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
※実が一部分でも茶色く変色しているものは、避けましょう。
・皮の紫色が濃く、光沢があるもの
・みずみずしさがあるもの
・持ってみて、重みを感じるもの
・ヘタがしっかりしているもの
・ヘタのトゲが、触ると痛みを感じるくらいに鋭いもの
・ヘタと実の間が、白~紫色にグラデーションになっているもの
保存方法
※ナスは収穫した時点、または輸送されている時点で、食べ頃を迎えてしまっている場合も少なくありません。購入後はなるべく早く食べた方が良い野菜のうちの一つです。もし、買ってもすぐには食べ切れない場合、冷凍保存してしまう方が、鮮度が落ちずに、却って美味しく食べられる可能性が高いです。
常温保存する場合
もし(春先や秋頃など)、8~12℃の、寒さを感じられる空間を作れるのであれば、一個ずつラップで包んで、常温保存すると良いです。ナスは低温に弱い野菜ですが、暖か過ぎても傷みが早くなってしまいます。
筆者の体験談
青果に関するブログを執筆している身でありながら、こんな事をいうのはライター失格かもしれませんが、ナスに限らず、「いちいち真面目に正しい方法で」保存のための作業をするのは、正直面倒だという方も、実は少なくないと思います。私もそう思ってしまう事、正直あります。
しかし、私が面倒臭がりだったおかげで得られた経験があります。
私は、ナスの実を裸のまま常温放置してしまった事と、同じく裸のまま野菜室に入れてしまった事の両方があるのですが、前者の方が、明らかに日持ちが良いです。部屋の温度が20℃ほどあっても、3~4日程度の放置であれば、問題なく食べられる事もあります。ただし、直射日光や乾燥、多湿は避けて下さい。また、カットしたものにこの方法は通用しません(以下に紹介する手順を踏んだ上で、冷蔵庫に保存して下さい)。
もちろんこのような、ずさんな保存方法はおすすめしませんが、ナスは低温に弱いという事実を、身をもって体験する事が出来ました。
冷蔵する場合
ペーパータオルに包んで保存袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存してください。この方法で1週間ほど保存出来る事もあります。
カットしたものは、保存袋に入れて、冷蔵室で保存。2~3日で使い切りましょう。
冷凍する場合
水洗いしてからヘタを取り、好みの大きさにカットして下さい。それから、電子レンジ(600ワット)で3分加熱、冷凍庫が故障しないようにするために粗熱を取った後、冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存して下さい。この方法で、1か月ほど保存出来る事もあります。
電子レンジを使わずに、炒める、焼くのも良いです。ちなみに、冷凍保存したナスを料理に使う際は、凍ったまま使うか、冷蔵庫で自然解凍をするのをおすすめします。
栄養
ナスはその実のほとんどが水分で出来ています。そのため、栄養価的にはあまり優れていません。
しかし、カリウムを少量ではありますが含んでいる事、何より、多くの料理との相性が良い事などから、栄養価だけでは計り知れない魅力があります。
ここではそのカリウムと、その他ナスが持っている成分で知っておくと良いものを、紹介します。
カリウム
体内の余分なナトリウム(塩分)を、体外に排出してくれる作用があります。これは、高血圧などを防ぐのに役立ちます。
また、カリウムには筋肉の収縮や、神経の伝達作用を正常に保つ働きがあるので、摂取すると、不整脈やけいれんなどを防ぐ事が出来る可能性があります。
その他
皮などに含まれるナスニンは、ナスの皮の紫色の色素です。ナスニンはアントシアニンの一つで、正式な効果が証明されたわけではありませんが、視力を回復させられる可能性が指摘されています。
健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせはあります。
こんにゃくと組み合わせると
動脈硬化予防などにつながる可能性があります。
にんじんと組み合わせると
がん予防や風邪予防などにつながる可能性があります。
とうがん(冬瓜)と組み合わせると
貧血予防や糖尿病予防などにつながる可能性があります。
おからと組み合わせると
品種(一部)
米ナス
アメリカ種を改良した大型の品種です。加熱調理に向いています。
水ナス
大阪泉州地域(岸和田市)特産のナスです。漬物が全国的に有名です。
青ナス
別名は緑ナスといいます。緑色をしているナスで、田楽や焼きナスにすると美味しいです。
白ナス
ナスニンや葉緑素を持たず、実が白いのが特徴です。加熱すると、とろりとした食感になります。
料理の際のアドバイス
ナスにはアクが含まれるため、味覚の面でみた場合、アク抜きをすべきといえます。
しかし、アク抜きに気を取られ過ぎると、先述のナスニンなどが流失してしまいます。
アク抜きをする際は、水にさらし、その時間は15分以内にすると良いです。
参考文献
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・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 160、198頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える! 野菜の教科書(初版)」2017年6月
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・竹下大学著 株式会社エクスナレッジ発行「野菜と果物すごい品種図鑑(初版)」2022年7月12日 80~85頁
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