オクラ―鮮やかなその色と美味しい粘り気を持った夏野菜です

台所に並べたオクラ 果菜類
台所に並べたオクラ

オクラとは

オクラとは、アオイ科トロロアオイ属に属する野菜です(果菜類)。旬は7~9月の夏野菜で、原産地はアフリカ地方とされる事が多いですが、まだはっきりとはしていません。鮮やかな緑色と、美味しい粘り気を持っているのが特徴です。

カットして皿にのせたオクラ
カットして皿にのせたオクラ

歴史

繰り返しになりますが、原産地はアフリカ地方とされる事が多いものの、まだはっきりとした事はわかっていません。しかし、熱帯地方の方が上手く育つ事は確かです(オクラは、霜が降りると枯れてしまいます。また、種子は20℃以下ではほとんど発芽しません)。

日本には、幕末の頃に入ってきたとされ、オクラに関するはっきりとした記述は、明治6年のものがあります。戦前においても野菜として育てられていた記述はあるものの、多くは観賞用または、完熟した種子をコーヒーの代用品に使う事の方が多かったです。

ちなみにオクラが日本に入ってきた頃、オクラは「アメリカネリ」と呼ばれていました。ネリとは「トロロアオイ」という、中国原産の植物で、オクラとネリが似ていた事、さらに日本にはアメリカからオクラが入ってきた事から、「アメリカネリ」と呼ばれていました。現在は、英名由来の「オクラ」と呼ばれます。

第二次世界大戦終了後、台湾や東南アジアから引き揚げてきた人々が、オクラを育て始めます。さらに高知県で、夏に栽培するのに向いている野菜として栽培が始まり、料理方法を紹介した説明書と合わせてパック詰めして売り始めると、栄養価の高さと相まってオクラの人気が高まっていきました。やがて北は秋田県でも栽培されるなど、栽培地域は拡大、昭和51年には農林統計に隔年で記録が載るようになりました。

良品の選び方

・緑色は鮮やかだが、濃すぎないもの

・がくがしっかりとしているもの

・6~8cm程度のものが良い。大きすぎは味が落ちる。ただし、沖縄で生産されている「島オクラ」は20cm程度に育つので、その場合は問題ない

・うぶ毛がびっしりと生えているもの

ちなみに、角が黒ずんでいるものは鮮度も味も落ちています

オクラは良品を選ぶのに色々気をつけるべき点が多く、少しややこしい野菜かもしれませんね。

保存方法

常温の場合

寒い時期は常温保存も出来ます。風通しの良い冷暗所で保存します。ネットのまま保存しても、上手く保存出来る可能性が高いです。

冷蔵の場合

①ネットのまま、ポリ袋に入れる。または密閉容器に入れて、冷蔵庫に入れて下さい、2~3日で使い切りましょう。

②数本ずつペーパータオルに包み、ポリ袋に入れて、野菜室で保存します。

※②の方法の方が、若干(2~3日程度)長持ちします。

冷凍の場合

①固めに塩茹でして、粗熱を取ったら、冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存します。

②ヘタとがくを取り除き、ラップで包んで冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存。または、こすり洗いでうぶ毛を取り除いて小口切りし、冷凍用保存袋に入れて、冷凍室へ。

※加熱せずに冷凍したい場合は、②を選びましょう。②の場合、約1か月保存出来ます。

栄養素

オクラを食べる事で、以下で紹介する栄養素を良く摂る事が出来ます。

β-カロテン

体内でビタミンAに変換されます。皮膚や粘膜の健康維持に欠かせない栄養素です。目の健康にも強く関わり、不足すると視覚障害や夜盲症になってしまう事があります。そして、抗酸化作用があり、がんや動脈硬化などの予防にもつながります。

ビタミンAの効率良い摂り方として、油を使う事が挙げられます。適量の油と一緒に摂る事は、ビタミンAの吸収を高めます。

ビタミンB₁

糖質の代謝に強く関わります。また、飲酒後のアルコールの分解にも関わるので、オクラを食べると二日酔いを防げる事があります。

糖質の代謝に強く関わるという事は、糖質からエネルギーを得やすくなります。そのため、疲労やストレス解消につながる事があります。

ビタミンB₂

脂質の代謝に強く関わります。「発育のビタミン」という別名があり、成長期のお子さんに欠かせません。不足すると、肌荒れや口内炎になってしまう事があります。

葉酸

赤血球の合成に関わります。細胞分裂にも関わるため、妊娠中の方や成長期のお子さんに不可欠です。さらに、認知症の予防に役立つ事もあります。

ビタミンE

活性酸素や過酸化脂質から身体を守る、抗酸化作用があります。「若返りのビタミン」の名もあります。

ビタミンEは細胞壁にも存在し、細胞を脅かす活性酸素から、細胞を守ります。さらに、血液中のリポたんぱく質にも存在し、酸化のダメージから血管を守ります。

そして、毛細血管を拡張し血流を整え、細胞の新陳代謝を促すので、頭痛や冷え性、肩こりにも良いです。

カリウム

細胞の浸透圧を調節します。高血圧や脳卒中の予防に関わります。また、むくみの改善に役立つ事もあります(むくみの原因となる事が多い、体内の余分なナトリウムを体外に排出する作用があるため)。

さらに、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達も保つので、カリウムを摂ると、不整脈やけいれんを防げる事があります。

カルシウム

体内に最も多く存在するミネラルです。骨や歯の材料になり、身体の生理機能を保ち、心臓の鼓動、筋肉や神経の活動、細胞の分裂、ホルモンの分泌にも関わる重要なミネラルです。

マグネシウム

骨を丈夫にします。また、エネルギーを生み出す事や、血液の循環にも関わります。

その他

オクラには水溶性食物繊維が豊富に含まれ、それは血糖値を下げる事や、コレステロール値の改善などにも役立ちます。

カットしてボウルに入れたオクラとやまのいも
カットしてボウルに入れたオクラとやまのいも

健康に良い組み合わせ

※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)はあります。

こんぶと組み合わせると

滋養強壮効果などがあります。

ブロッコリーと組み合わせると

がん抑制などにつながる事があります。

※ブロッコリーについては以下のリンクを参考にして下さい。筆者がブロッコリーについて執筆したものです(当ブログの別ページです)。

鶏肉と組み合わせると

免疫力向上、スタミナ増強につながります。

酢と組み合わせると

血行促進や高血圧予防などに役立つ事があります。

品種(一部)

赤オクラ

赤い色をしたオクラです。茹でると緑色になってしまうので、色を活かすなら生食しましょう。

ミニ

若採りしたオクラです。やわらかくて生食に向いています。

参考文献

・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」2013年9月25日 157~159頁

・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 203頁

・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える!野菜の教科書」2017年6月2日 35頁

・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 26頁

・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ 株式会社池田書店発行「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 94~101、104~105、108、112、115~117頁

・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 56、255頁

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