カブとは
カブとは、アブラナ科アブラナ属に属する野菜(根菜類)です。旬は、春または秋から冬にかけてという事が多いです。生食してもよし、漬物にしてもよし、もちろん加熱してもよしと、幅広く扱え、古くから多くの日本人に愛されてきました。また、葉も食べる事が出来ます。ちなみに、カブは漢字で「蕪」と書きます。英語ではturnipといいます。
簡単な歴史
原産地はアフガニスタン付近の中央アジア、またはヨーロッパ西南部の沿岸地帯といわれています。1~2世紀のローマでは、すでに長カブ、丸カブ、平カブの区別がされていた記録があります。ヨーロッパで本格的にカブの栽培が行われるようになったのは16世紀以降です。アメリカでも16世紀以降にカブが伝わり、栽培が盛んになります。
中国には秦・漢の時代にはすでに伝わっていたとされます。後漢の時代には、カブが災害時の緊急食として利用されていたとされます。
その一方で、日本にいつ頃カブが伝わったかは、はっきりとしていません。しかし、かなり古くから栽培されていたと思われます。日本書紀や万葉集にもカブの記載がある事から、古くから重要視される野菜であった事には間違いありません。江戸時代には、今の日本において出回っているカブがすでにかなり完成していて、現在80種ほどの地方品種があるといわれています。先人の知恵を活かして、現代においてもF1品種(一代雑種)が作られ続けるなど、食卓を彩る野菜です。
良品の見分け方

※ここで紹介する特徴を持つカブを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
・皮にハリとツヤがあるもの
・茎が淡い緑色で、ピンとまっすぐなもの
・ひげ根やでこぼこが少ないもの
・持った時に見た目より重みを感じられるもの(触れすぎは商品を傷めるので注意して下さい)
保存方法
冷蔵の場合
根と葉を切り分けて、保存袋に入れて冷蔵庫の冷蔵室で保存して下さい。3~4日で使い切るのが望ましいです。なお、葉は濡れた新聞紙などに包み、冷蔵庫の冷蔵室で保存します。なるべく早く使い切りましょう。
冷凍の場合
筆者の手元に参考となる文献がないため、自信を持っての発言は出来ませんが、大根の冷凍保存法と同じ方法が使えると思われます。皮をむき薄めにカットした上でラップに小分けし、冷凍用保存袋に入れて冷凍室で保存しましょう。その際、調味料やドレッシングなどで味付けをすると、解凍時により美味しく食べられると思われます。
また、葉の方は塩ゆでして水気を絞り粗熱も取り、冷凍用保存袋に入れて冷凍室で保存します。これで約1か月保存出来る事もあります。
栄養素


この記事では、根(実)の栄養素について解説します。葉の栄養素については、別の機会に解説します。
根はほとんどが水分で出来ているため、何か特筆すべき栄養素を持っているわけではありません。しかし、少量ではありますが、ビタミンCとカリウムを含んでいます。ここではそれらを中心に解説します。
ビタミンC
肌を美しくするのに関わるコラーゲンの生成に関わります。ビタミンCは、肌を美しくするのに欠かせません。また、抗酸化作用があり、ガンや動脈硬化予防にも有効です。さらに、白血球の活動を高めるので、風邪などの感染症予防にも役立ちます。
ビタミンCは水溶性で、いまこの瞬間必要ない(過剰になっている)分は、尿などにより流失します。これは、体内に貯蔵する事が出来ない事を意味します。そのため、ビタミンCは適時補給する必要があります。
カリウム
体内の細胞の浸透圧を保つのに必要です。高血圧や脳卒中を予防するのにも効果があります。また、カリウムは体内の余分なナトリウムを体外に排出する効果もあります。これは、むくみの改善に役立つ事を意味します。
さらにカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達にも関わるので、不足すると不整脈やけいれんなどを引き起こしてしまう事があります。
その他
根(実)には大根同様にジアスターゼという消化酵素が含まれています。そのため、適度にカブを食べる事は、胃もたれや胸やけの解消に効果があるといえます。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)はあります。
白菜と組み合わせると
ガン予防などに効果があります。なお、白菜については以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
ごぼうと組み合わせると
血中コレステロール値低下などにつながる可能性があります。なお、ごぼうについては以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
やまのいもと組み合わせると
胃もたれ解消などに役立つ事があります。なお、やまのいもについては以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
わかめと組み合わせると
血行促進などに役立ちます。
品種(一部)
ゆりかもめ
本来旬ではない夏でも採れるカブです。根の肥大が早いため、害虫の被害が酷くなる前に収穫する事が出来ます。
温海かぶ
温海は「あつみ」と読みます。山形県鶴岡市温海地区の山間部で栽培されています。
野沢菜
野沢菜と言えば「葉」が注目されますが、根茎も出来ます。近年は葉だけでなく、根茎も捨てずに利用されつつあります。
レポート―カブの生食

恥ずかしい話なのですが、私は子どもの頃から、「カブは加熱して食べるもの」という固定概念がありました。
しかし、エックス(旧ツイッター)を中心に交流をさせてもらっている大切な先輩かつ仲間のお一方が、「秋カブの生食は美味しい」という情報を発信され、私の中の好奇心が沸き上がりました。
私はそう時間を置かずに、自宅近くのスーパーに足を運びました。その日は売られているカブの数が少なかったものの、幸い購入する事が出来ました。
自宅に帰り、大きさにカットしましたが、見た目大根のようでした(笑)。そのためか、特にたじろく事なく生のカブを口にしました。
味を表現すると、先輩かつ仲間の方がおっしゃっていた通り、大変美味しかったです。もう少し細かく表現すると、大根よりはマイルドだけど、コールラビよりは鋭さがあるみたいな感じでした。私はその後塩を振っての試食も試みましたが、こうするとかなり大根に近い味になりました。
私に新しい世界を教えて下さった先輩かつ仲間の方に、ここで感謝の意を申し上げます。
なお、文中に登場した大根とコールラビについては、以下のリンクを参考にして下さると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
参考文献
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 212~215頁
・板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「からだにおいしい 野菜の便利帳」2021年11月15日 74~75頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 58~59頁
・武田和哉、渡辺正夫編 株式会社勉誠出版発行「菜の花と人間の文化史 アブラナ科植物の栽培・利用と食文化(初版)」2019年6月28日 15~24頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える!野菜の教科書」2017年6月2日 54~55頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 205頁
・竹下大学著 株式会社エクスナレッジ発行「野菜と果物 すごい品種図鑑(初版)」2022年7月12日 20~25頁
・足立香代子監修、kirishima・サイドランチマンガ 株式会社池田書店発行「マンガでわかる栄養学」2021年12月20日 94~95、102~103、112頁