たけのことは
たけのことは、イネ科マダケ属に属する植物です。タケ類の若い茎を総称してこう呼ぶ事が多いです。いわゆる「野菜」として扱われる事もあれば、「山菜」として扱われる事もあります。
後述しますが、扱いがなかなか大変な食材です。しかしその分、上手く扱う事が出来た時にはその美味にありつく事が出来る、春の訪れを感じさせてくれる食材です。4~5月の短い期間が旬という事が多いです。
簡単な歴史
原産地はヨーロッパ、西南アジア、インド付近とされています。日本にも古くからタケは存在していましたが、現在多くたけのことして利用されるタケである「孟宗竹(もうそうちく)」が日本に伝わってきたのは、17世紀から18世紀頃とされています。
ちなみにタケそのものは、建築材料、イカダ、床板材、家庭用具などにも利用され、タケを食用として植えているのは日本や中国など、少数の国や地域に留まります。
良品の見分け方
※ここに挙げた特徴を持つたけのこを選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
※もし読者のみなさんご自身が、実際に山中でたけのこを掘る場合は、頭を出して間もないものを掘ります。頭を出して数日もしたものは、えぐみが強くなってしまい、アク抜きしても食べるのが難しい状態になってしまいます。
・穂先が黄色いもの(緑色のものは、日に当たり過ぎていて、筋がかたく苦みが強いものが多いです)
・穂先の外皮のツヤが良いもの
・皮が淡黄色または薄茶色でツヤと湿り気があるもの
・小ぶりでずっしりとしているもの
コラム1―白い粉の正体

たけのこの水になどを購入すると、白い粉のようなものが付着している事があります。これは、「チロシン」というアミノ酸の一種です。カビや毒ではないので、取り除かずに料理に使用して問題ありません。
ちなみにチロシンは、まだはっきりした事はわかっていませんが、脳を活性化する(アバウトにいうと頭を良くする)可能性がある事が指摘されています。
アク抜きの仕方
先述しましたが、たけのこは扱いが大変です。「朝掘ったら、その日のうちに食べろ」といわれるほど、すぐに鮮度が落ちます。掘り立てのものは生食出来ますが、そうでないものはアク抜きする必要があります。ここで私がお伝えするのは一般的にいわれている方法です。この他の方法を提唱する先生もいらっしゃいますが、基本的にはこの方法で大丈夫です。
1.皮に切れ目を入れて、火の通りを良くする
2.縦に切れ目を入れる(根元まで入れると味が落ちてしまいます)
3.たっぷりの水、米ぬか(または米のとぎ汁、あるいは重曹)と赤唐辛子を入れ、約1時間煮ます。火が通っているかどうか、竹串を刺して確認しましょう
4.煮たら火を止めて、そのまま一晩(約8時間)おいておきます
保存方法は以下を確認してください。
保存方法
冷蔵の場合
アク抜きしたものを、水を張った保存容器に入れ、冷蔵庫の冷蔵室で保存します。水を毎日取り換えてやると、約5日保存が利く事もあります。
冷凍の場合
アク抜きしたものを好みの大きさにカットします。茹で汁と一緒に冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存します。この方法で、約1か月保存出来る事もあります。
少し難しいが有益な保存方法
これはやり方が難しいですが、上手く行くと約1年保存可能な方法です。アク抜きして適当な大きさに切ったたけのこをビンに入れ、水を注ぎます。ビンにフタをしてそのまま沸騰したお湯で30分煮てから保存すると、常温でも約1年保存が利く状態になります。ただし、途中でフタを開けた場合は、その場から鮮度が落ちるので、上記の冷蔵または冷凍保存をし、早めに食べましょう。
栄養素
たけのこは、以下に挙げる栄養素の摂取源になり得ます。
カリウム
身体の細胞の浸透圧を調節する働きがあります。体内の余分なナトリウムを体外に排出してくれるので、高血圧や脳卒中の予防に役立ちます。
またカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達にも関わるので、不足すると不整脈やけいれんを引き起こしてしまう事があります。
マンガン
カルシウムやリンとともに、骨の代謝に関わります。タンパク質や脂質の代謝にも関わる他、
抗酸化性でも注目されているミネラルです。
その他
不溶性食物繊維であるセルロースを含んでいる事から、たけのこの適度な摂取は大腸がんや便秘を予防する可能性があります。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する組み合わせ(食べ合わせ)以外にも、健康に良い組み合わせはあります。
セロリと組み合わせると
便秘予防などに役立つ可能性があります。なお、セロリについて以下のリンク先で解説しているので、参考にしてくださると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
ひじきと組み合わせると
大腸がん予防などにつながる可能性があります。
オクラと組み合わせると
スタミナ増強などに貢献する可能性があります。なお、オクラについて以下のリンク先で解説しているので、参考にしてくださると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
さつまいもと組み合わせると
老化防止などにつながる事があります。
品種(一部)

破竹(はちく)
やや細身ですが、アクは少ないです。5月が旬である事が多いです。
大名たけのこ
寒山竹の別名を持ちます。九州南部に自生し、皮つきのままホイル焼きにすると美味しいそうです。
まだけ
日本で古くから栽培されています。7月以降に出回る事が多いです。
根まがり竹
北海道でも育つ事が出来る品種です。細身でアクが少ないのが特徴です。6月頃に出回る事が多いです。
コラム2―気持ち悪い?
私がまだ青果店で勤務していた頃の事です。たけのこの旬を迎え、大先輩の女性スタッフさんにたけのこの袋詰め(商品化)の仕方を教わりながら、袋詰めをしていたのですが、たけのこの根、正直見た目はあまり良くありません(笑)。
その事を率直に大先輩に話すと、大先輩は「そうなんだよね。たけのこの根は正直あまり良い見た目をしていないよね。私も気持ち悪いと思ってしまうよ」と、私の気持ちをわかってくれました。
恐らく、多くの方々にとって良くない気持ちになる見た目をしているので、インターネットでも検索しない事をおすすめします。食べると美味しいたけのこの、思わぬ短所を知った日になりました。
参考文献
・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」2013年9月25日 269~272頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 142~147、219頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える!野菜の教科書」2017年6月2日 108~109頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 127頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 27、239~264頁
・飯田薫子、寺本あい監修 株式会社西東社発行「一生わかる きちんとわかる栄養学(第2版)」2021年7月10日 247頁