この記事で、毒草との見分け方などを学べます
前置き
野蒜とは
野蒜(ノビル、これ以降この記事では野蒜を「ノビル」と表記します)とは、ユリ科ネギ属に属する野草です。
日本の多くの地域の道端や土手、公園の片隅でも見かける事がある、野草や山菜の中では採集が容易である場合が多い、大変身近な食材です。
どんな味がするの?
後述しますが、ノビルは採集して匂いを嗅ぐと、ネギにきわめて良く似た香りがします。
味はいわゆる小ネギ(万能ネギ)にそっくりで、刺激がありつつも、食欲を優しく満たしてくれそうの濃い味がします。
料理の主役にも脇役にも、どちらにもなれそうな、料理における用途が広いと思われる食材です。
美味しい時期
鱗茎だけならば、一年中楽しめます(冬に雪や氷に閉ざされる地域では難しいですが)。
葉も楽しみたい場合、特に美味しい時期は、5~7月の、春の終わりから夏の始めの時期です。
原産地と歴史
原産地は日本です。
現存する日本最古の歴史書である「古事記」にも登場するなど、人間と古くから関わりがありました。
呼び方
日本語だと
この記事のタイトルに「野蒜」という漢字表記をしましたが、「蒜(ヒル)」という漢字は「ネギの総称」を意味します。
前述の通り、小ネギにそっくりの味がする事から「野生のネギ」といっても差し支えがない存在かもしれません。
古い書物に「蘭」という名の植物が出て来ますが、これは「アララキ」または「アララギ」と読まれる事があります。「ラン」ではなく、アララキまたはアララギの読み名で読まれる場合は、ノビルの事を指すのではという説があります。
現代においては、ノビルはノビル以外の名だと「ヒルナ」「コビル」「ヒル」などと呼ばれる事もあります。
英語の場合
ノビルには様々な英語表現があります。
基本的に「wild onion」または「wild garlic」と表現すれば、通用する場合が多いです。
毒草との見分け方


基本
ノビルに限らず、野草や山菜を採集・試食する時に注意が必要なのが、「良く似た毒草の誤採集・誤食」です。
ノビルと姿が良く似た毒草に、スイセンなどが挙げられます。
見分ける自信がないのであれば、もちろん採集や試食は避けるべきです。
その上で、ノビルにはスイセンなどにはない、決定的な違いがあります。
それが前述した「ネギと極めて良く似た香りがする事」です。
見た目だけで見分ける自信がない場合、香りを確かめてみるのも手です。
実際に採集してみて
私も実際にノビルを採集しましたが、その際は香りを確かめて採集し、毒草の誤食を避ける事に成功しました。
私はこの時、風邪の治りかけで鼻詰まりを起こしていましたが、それでもネギと良く似た香りをはっきりと感じられるくらい、香りが強かったです。
あくまで個人の感想ですが、香りを確かめるのは、毒草の誤食を避けるのに、有効な手段かもしれません。
良品の見分け方
※ここに挙げた特徴を持つノビルを採集すると、良品に出会える可能性が高くなります。
・茎の部分が真っ白
・茎に太さがあるもの
・葉の部分は、茎と対照的に、緑の色合いが濃いもの
下処理の仕方
野草・山菜は、下処理に手間がかかるものも多いですが、ノビルはかなり容易に下処理出来ます。
しかも、アク抜きなしで食べる事が出来ます。水で良く洗い、薄皮をむいて、ひげ根を落とすだけで食べられます。
ノビルは、上記の下処理をすれば、生食しても問題ありません。
保存方法
通常の保存の仕方
薄皮を残した状態で、新聞紙などに包み、冷暗所で保存します。
この方法で、3~4日程度、保存が出来る事が多いです。
しょう油漬け
長期保存には、しょう油漬けをすると良いです。
下記のウェブページに、詳細が載っています(当ブログと別サイトに飛びます)。

とても参考になるので、ぜひお読みください。
栄養素

ノビルには、いくつかの栄養素が程良く含まれています。
以下でそれらを簡単に解説します。
β-カロテン
体内でビタミンAに変換されます。
厳密さを欠く表現になりますが、「β-カロテン=ビタミンA」と捉えて、問題ない場面も多いです。
ビタミンAには抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化の予防などに役立ちます。
皮膚や粘膜の保護にも役立ちます。
またビタミンAは、目の健康維持とも強く関わりがあり、不足すると、夜盲症などを引き起こしてしまう事があります。
ノビルにおいては、ビタミンAは、葉の部分に良く含まれています。
ビタミンC
抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化の予防などに役立ちます。
皮膚に含まれるコラーゲンの生成に強く関わるので、美肌作りにも欠かせません。
また、ビタミンCの適度な摂取は、風邪などの感染症予防にも役立つ事があります。
ビタミンE
抗酸化作用があり、「若返りビタミン」「老化抑制ビタミン」といった別名があるほど、身体の若さを保つのに役立つ可能性を持っています。
血液の循環を良くして、冷え性や肩こりなどを改善してくれる事もあります。
その他、性ホルモンの分泌にも関わりがあるので、生殖機能の維持にも役立つ事があります。
そのため、「子どもが欲しい」と考えている方には、とても良い栄養素である可能性があります。
カルシウム
ご存じの方も多いであろうミネラルです。
体内に最も多く存在し、骨や歯の材料になります。
それ以外にも、心臓の機能調整、筋肉の収縮と弛緩、ホルモン分泌などにも貢献するミネラルです。
その他
骨を強化する働きがあるビタミンK、認知症を予防してくれる可能性が指摘されている葉酸なども、ノビルは含んでいます。
そしてノビルは、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維どちらも良く含んでいる事から、コレステロール値や血糖値の低下、便秘や大腸がんの予防などにも貢献する可能性があります。
健康効果
ノビルの適度な摂取は、以下に挙げる健康効果をもたらしてくれるかもしれません。
・老化の抑制
・コレステロールの上昇抑制
・高血圧の予防・改善
・整腸作用
ギョウジャニンニクとの比較(個人的感想)

私がノビルを試食した時、「ノビルはどこかギョウジャニンニクと似ているかもしれない」と思いました。
確かに味や香りが似ています。
その上で、ノビルの方が、よりネギに似た香りがあり、味も濃いめだと思いました。
ギョウジャニンニクは、ネギというよりも、にんにくの香りに近い香りを感じると、個人的に思いました。
なお、ギョウジャニンニクについては、以下のリンクを参考にしてくださると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
参考文献
本・雑誌類
・青葉高著 株式会社八坂書房発行「日本の野菜文化史事典(初版)」2013年9月25日 417~419頁
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 34~40頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 82,84頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 37、239~264頁
ウェブページ
本文中に掲げたもの。
リンク
当ブログ(ノビルと同じユリ科の食材)


当ブログ(野草・山菜類)



