菜花とは
菜花とは、アブラナ科アブラナ属に属する野菜(葉茎菜類)です。栄養豊富で、いわゆる緑黄色野菜に分類されます。単純に、「菜の花」とか「アブラナ」と呼ばれる事もあります。
記事の序盤から余談ですが、私は何故か、アブラナ科の野菜が好みです。ちなみにアブラナ科の野菜は、大根や白菜、キャベツやブロッコリーなどもこれに当たります。
かつては灯りをつけるためのエネルギー源として、日本各地の至る所で菜花が栽培されていました。石油や再生可能エネルギーなどが、電気のために使われる今、大昔に比べて面積は狭くなりましたが、それでも春になると菜花が咲き誇るきれいな風景を見る事が出来ます。
簡単な歴史
原産地はヨーロッパ、バルト海沿岸からウクライナ、ベラルーシを経てシベリアに至る地域とされています。細かい事をいうと、古くから日本で栽培されていたアブラナと、明治の頃から日本で栽培されるようになったセイヨウアブラナは、同じ菜花(アブラナ)でも別のものです。
ヨーロッパ原産の菜花は、紀元前には中国に伝わっていた可能性が高く、日本にも奈良時代までには伝わっていたとされます。戦国時代を生きた斎藤道三は、油屋として成功して美濃一国を手に入れましたが、斎藤道三が扱っていた油こそ、菜花から採れる菜種油でした。
菜花(アブラナ)=油を採るための植物、というイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、奈良時代までには、人は菜花が食用可能である事を見抜いていたようで、食用としても利用されていたようです。
コラムその1―どうやら食用可能らしい
私の自宅近辺に、菜花によく似た黄色い花が咲いていました。グーグルの画像検索機能でその花を調べると、「ハルザキヤマガラシ」という検索結果が出ました。
さらに調べてみると、ハルザキヤマガラシはアブラナ科の植物である事、繁殖力が強く生態系を脅かす可能性があるため、積極的に駆除すべきだといわれている事がわかりました。
うっとうしいもの扱いされているハルザキヤマガラシですが、どうやら食用可能だそうです(食べ過ぎると体調不良になるそうですが)。私が好んでいるアブラナ科の植物ですし、いつか試食に挑戦する日が来るかもしれません。
良品の選び方

※ここに挙げた特徴を持つ菜花を選ぶと、良品に出会える可能性が高くなります。
※黄色い花が咲いてしまっているものは、味が落ちてしまっている事が多いです。
・茎が太く、つぼみが小さいもの
・つぼみが締まっているもの
・葉や茎がみずみずしいもの
茹で方のコツ
手間がかかりますが、茎と葉を切り分けてから茹でると、より美味しく食べる事が出来ます。
茎から先に茹でて、葉の茹で時間は短めにしてやると良いです。茎も葉も、茹でたらすぐに冷水にとり、水気を絞って食べましょう。
ちなみに、ほうれん草に比べてアクが少ないので、「茹でるの面倒だからそのまま炒めて食べよう」という事も出来ます(健康への負の影響が少ないため)。
保存方法
冷蔵の場合
生で保存する場合
ペーパータオルに包み、ポリ袋に入れ、冷蔵庫の冷蔵室で保存します。一応、5日程度保存が利く事が多いですが、なるべく早めに食べた方が、香りや風味をより楽しむ事が出来ます。
加熱してから保存する場合
固めに塩茹でし、水気を拭き取りラップで包んで、冷蔵庫の冷蔵室に保存します。手元に資料がないので、推測での発言になってしまいますが、余分な水気をしっかり拭き取り、ラップをしっかりしてやると、1週間程度保存出来る事もあると考えられます。
冷凍の場合
生で保存する場合
よく洗い、水気をしっかりと切り、根元を落としてラップで小分けします。その後、冷凍用保存袋に入れて、冷凍室で保存します。この方法で、1か月程度保存出来る事もあります。
加熱してから保存する場合
固めに塩茹でし、粗熱を取り、冷凍します。冷凍する時は、ラップで小分けして、冷凍用保存袋に入れて、冷凍すると良いです。
コラムその2―少し品質が落ちても良いのなら
私が青果業界の大先輩たちの書籍やインターネット投稿を読んで、「冷凍保存の方法」について勉強していると、「1か月程度保存可能」な野菜や果物などの多さに気づかされます。私もいくつかの食材について、冷凍を試みてみました。
これは「白菜」についての実験なので、菜花にもこれが当てはまるとは言い切れませんが、私の実験では、多少品質が落ちても良いのなら、2か月冷凍保存しても、十分に食用として使用可能だと知りました。
冷凍保存という保存方法が万能なわけではありませんが、食材を腐らせて無駄にするくらいなら、多少品質が落ちてでも冷凍保存してやる方が、フードロスなどを防ぐ事が出来るかもしれませんね。
栄養素

菜花は、以下に挙げる栄養素の補給源になり得ます。
β-カロテン
体内でビタミンAに変換されます。厳密さを欠いてしまいますが、β-カロテン=ビタミンAという捉え方をしても、問題ない事が多いです。ビタミンAには抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化などを予防してくれます。また、皮膚や粘膜の健康維持にも関わります。
その他、ビタミンAは目の健康維持にも必要なため、不足すると、夜盲症などを引き起こしてしまう事があります。
ビタミンC
和種(古くから日本で栽培されている品種)の場合、生の状態で可食部100g中に130mgのビタミンCを含みます。茹でると44mg程までに減ってしまいますが、それでも十分に摂取源として成り立つ数値です。
ビタミンCにはビタミンA同様に抗酸化作用があります。また、コラーゲンの生成にも強く関わるので、美肌作りには欠かせません。
その他、風邪などの感染症予防にも、ビタミンCは役立ちます。
カリウム
体内の細胞の浸透圧を調節します。体内の余分なナトリウムを体外に排出するので、高血圧や脳卒中の予防に役立ちます。
またカリウムは、筋肉の収縮や正常な神経の情報伝達にも関わるので、不足すると不整脈やけいれんを引き起こしてしまう事があります。
カルシウム
ご存じの方も多いと思われますが、骨や歯の材料になる、体内に最も多く存在するミネラルです。
骨や歯の材料になるだけでなく、心臓の機能調節、筋肉の収縮や弛緩、ホルモン分泌にも必要になります。
鉄
体内では主に血液中に存在し、全身に酸素を運ぶのに強く関わります。不足すると貧血などを引き起こす事があります。閉経を迎える前の女性などに、不足が起きてしまう事が時々見られます。
その他
菜花には、肌荒れや口内炎を防ぐ可能性があるビタミンB₂、冷え性や肩こりなどを改善してくれる可能性があるビタミンEなども、含まれています。
健康に良い組み合わせ
※ここで紹介する以外にも、健康に良い組み合わせ(食べ合わせ)はあります。
にんじんと組み合わせると
糖尿病予防などに役立ちます。なお、にんじんについては、以下のリンクを参考にしてくださると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
玉ねぎと組み合わせると
血行促進などに役立ちます。なお、玉ねぎについては、以下のリンクを参考にしてくださると嬉しいです(当ブログの別ページに飛びます)。
ワインと組み合わせると
血中コレステロール値低下などにつながる事があります。
マヨネーズと組み合わせると
骨粗しょう症予防などに貢献します。
参考文献
・相馬暁著 株式会社三一書房発行「新装版 野菜学入門(初版)」2006年3月10日 236~239頁
・大場秀章著 株式会社新潮社発行 「サラダ野菜の植物史」2004年5月15日 106~110頁
・青髪のテツ著、ムラセセラマンガ 株式会社Gakken発行「マンガでわかる やさいのトリセツ 野菜のプロが教える選び方・保存法・無駄なくおいしく食べるコツ(初版)」2023年7月11日 221頁
・川端理香監修 株式会社宝島社発行「毎日使える!野菜の教科書」2017年6月2日 94頁
・白鳥早奈英、板木利隆監修 株式会社高橋書店発行「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」2020年7月10日 104頁
・吉田企世子監修 株式会社エクスナレッジ発行「春夏秋冬おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典最新版(初版)」2016年5月23日 175、239~264頁